ゆりかごを揺らす手が世界を握る

お母さんたちに眠っている力

村で子どもを育てる日本の環境は都会では失われてしまいましたが、私たち日本人には未だ、失っていない隠れた能力が眠っています。その潜在能力に目覚める道への羅針盤は、五感を整えることで手に入れることができます。

子どもの能力を伸ばしてあげたいと思わない親はいないはずです。子どものためなら、できることは何でもやってあげたいとも思われることでしょう。一人から始まってその人数が草の根式に増えていけば、ゆりかごを揺らす手が日本を救うことは可能かもしれません。

社会の変化は大きな布を持ち上げることに喩えられます。力のある少数の人たちが社会という布の一端を引き上げたらどうなるでしょう?布の上にのっている人たちは下に落ちてしまいます。格差のない社会で多くの人たちが協力しながら、社会という布を持ち上げることで、皆を救える社会になることでしょう。

ママソマ活動(ママのためのソマティック)
※4年前にお母さんたちによって草の根式に始められました。
https://peraichi.com/landing_pages/view/mamasoma/

子どものために整える

自分のことを二の次にしてしまうのは、一家のお母さんの常です。しかし三島由紀夫が「人間というのは自分のためだけに生きて、自分のためだけに死んでいけるほど強くない」と、インタビューの中で言い残したように、他者のために生きることで強くなれるとしたら、自分自身を大切にすることを疎かにしがちなお母さんたちは大きな武器があります。それは子どものためならできるだけのことをする、母親の持つ本能とも言える強い意志です。

飛行機に乗ると機内で酸素マスクの装着について、お子さんが一緒の方は先ずは親が先にマスクを着けてから、子どもに着けるよう説明されます。自身を救わなければ子どもを救えないからです。孤育てやワンオペで子育てをしているお母さんたちはもちろんのこと、誰かのために何かをしたいと思う気持ちのある人であれば、先ずは自分自身を救うことが先決です。

子育てで、親の心身が整っている状態が、子どもが安心して学べる環境となり、それは子どもの非認知能力にも深く関わっているだけでなく、家族が変わる究極の方法とも言えるでしょう。自分のためだけではなく子どものためにも、親が自分自身を整えることはとても大切です。

魂の息吹を継承する

お母さんたちは日々、子どもに(もっとこうなって欲しい)と思うことがたくさんあると思います。例えば、言わなくてもできる子になって欲しい、子どもらしく元気でいて欲しい、お友達と上手く付き合って欲しい、失敗してもくよくよせずに頑張れる子になって欲しい、辛いことに耐えられる子になって欲しい、様々なことに好奇心を抱いて欲しい、萎縮せずに自信を持って欲しい、工夫したり応用できる能力を持って欲しい、自発的に学べる子になって欲しい、怠けずに努力できる子になって欲しい等々、これらは非認知能力と言われる力です。

しかし、子どもにそうした力を身につけて欲しいと思っても、算数のドリルのように訓練で結果を出せるものではありません。非認知能力は数値化できないだけでなく、非認知能力の教育には確立された方法や攻略法はありません。人の意識や意思や心の在り方は複雑だからです。情報を知っているとか、やり方を教わってできるようなものではなく、魂の息吹を継承していくのです。

そこでとても重要なのは環境です。空気によって伝わるような大人たちの在り方が環境となります。そうした人という環境を作る手助けをしてくれるのが、豊かな自然との関わりです。正に日本の過疎地と呼ばれている田舎だからこそ、ゆったりと見守ってくれる人々が、自然との調和の中でできる役割ではないかと考えます。その環境に身を委ねることで、自然と癒されて本来の自分自身を取り戻していかれることと思います。

©️ランディー由紀子