村のようなコミュニティの世界観へ

一人の子どもを育てるには一つの村がいる

熊本県山鹿市は、九州のおへそ辺りにある位置にあります。九州中どこにでも行きやすいとも言えますが、逆に言えばどこに行くにも若干遠い隔離された場所です。

そのためか、昔ながらの日本の良さがそのまま残っているように感じられます。なだらかな山に囲まれ自然の恩恵に恵まれたこの里山では、人々はすれ違うと笑顔で挨拶を交わします。振り返った時の顔の表情のマイクロ・エクスプレッション※が、調和のとれた豊かな自然の中で、何世代にも渡って育んできた人々の在り方を物語っています。

※マイクロエクスプレッション:無意識のうちに束の間、かすかに生じる顔の表情で真の感情を表す

「一人の子どもを育てるには一つの村がいる」。これはアフリカの諺だそうですが、ここ山鹿にはその環境があります

しかし現代の日本で子育てをしている多くの人たちにとって、村で子どもを育てる環境は縁遠く、まるで昔話の世界です。こうした昔ながらのコミュニティーは、マンションの厚い壁に区切られた中で生活している、厳しく殺伐とした現実には存在しません。

日本は戦後、急激な都市化や高度経済成長と共に、3世代同居などの大家族世帯が減少し核家族化が進行しました。そのような社会構造になってから、3~4世代経っています。

親の姿は子どもに連鎖しますので、孤独に子育てをしていて親自身が心身ともに疲れていれば、非認知能力の教育まで考える余裕がありません。そしてその姿は、そのまま次の世代に受け継がれていきます。

だから今、村のようなコミュニティーが必要なのです。村中で子どもを育てていた時代の日本人が、新しい世代の人たちに伝えられることは、何かをするといったDoingではなく、在るだけでいいBeingで伝えられる世界観です。

©️ランディー由紀子